初めて交わした言葉は

2012-02-08

初めて交わした言葉は
何だっただろう?

一番最初に口にした話題は?

すっかり忘れてしまった。

それほど
何でもないことだった。

しばらく会話をしてから
レンが聞いた。

「慣れてるみたいだけど
 常連かな?」

「ううん、
 はじめて来たよ」

本当を言うと
チャットは初めてではない。

このサイトに来るのは初めて
という意味であたしは答えた。

以前にチャットサイトに
出入りしていたのは
もう五、六年前になるだろうか。

当時付き合っていた彼氏が
チャットサイトにハマっていて
彼の友人があたしに
「浮気現場発見。
 このサイトに行け。」

そう密告してきたのが始まりだった。

偵察に潜入したサイトで
チャットを知り
あたしもそこで暇潰しをするようになった。

時間の空いた時に覗くと
いつも誰かいる。

顔の見えない相手と
どうでもいい冗談を言い合っているのは気が楽だった。

アダルト色の強いサイトだったから
メールや電話にしつこく誘う奴もいたが
あまり相手にしなかった。

逆に
「セフレ募集!!」
などの文句で待機している奴の所へわざわざ行って
「なんでセフレが欲しいの?
 それって誰でもいいの?」
と質問攻めにする
荒らしのようなことをして遊んだ。

もっと質の出会い掲示板やネカマが
蔓延っていたんだから
こんなのは可愛いものだろう。

実際に
疑問に思っていたんだし。

初めは口説く体勢で
上手いことばかり口走る男が
こっちの意図に気付いて
激昂していく様はおもしろかった。

本当、くだらない。

ネットには
狂気にも似た欲望が
わんさと転がっている。

皺一つないスーツに身をつつんだサラリーマンも
頭の中は変態染みた妄想でいっぱいなんだと知ったのは
この頃だった。

そう言えば
レンはそういう話を一切しない。

住みや年齢も気にしない。

会うという前提で会話をしていないからだ。

あたしは
レンの次の言葉で
その理由を知る。

「俺は―――

 同志を捜してる。

 心で繋がり合える仲間だ。」

「なにそれ?
 テレパシーとか?」

思わず茶化してしまったけど
あたしの心臓は高鳴っていた。

あたしも―――

レンと同じものを
捜していたから。

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